相談内容
ご依頼者は結婚して以来ずっと専業主婦でした。子供たちはみな独立し、相手方である夫と生活するようになりました。夫は仕事人間であり、今までも家庭のことは顧みず、仕事に打ち込んでいました。夫が仕事を頑張ることで今まで経済的に困ることはありませんでしたが、家事や育児はすべてご依頼者が行い、夫はまったく協力してくれませんでした。
ご依頼者は夫と二人暮らしになることで夫婦水入らずの生活ができると思っていましたが、夫の家庭無関心の態度は変わるところはなく、むしろひどくなっていました。ご依頼者は子供たちがいることもあって今まで我慢してきましたが、今後は自分の時間を大切にしたいと離婚を考えるようになりました。
ご依頼者は夫に離婚の話をしましたが、夫は「いまさら離婚してどうする」「専業主婦では一人でやっていけないだろ」と言って離婚を拒みました。ご依頼者は正直今後の経済面に心配はありましたが、やはり離婚をしたいと調停を起こすことにしました。
一言アドバイス
専業主婦でも財産分与を請求できます。また財産分与の対象となる財産には様々なものがあります。そのため、専業主婦でも多額の財産分与を受けられる場合があります。
アドバイス詳細
財産分与とは、夫婦共同生活の中で形成された財産を対象とします。そして、夫婦共同生活の中で形成された財産には夫婦の間に増えた預貯金や夫婦の間に購入した不動産、さらには夫婦の間仕事をすることで得られることになった退職金など様々なものがあります。
そのため、婚姻関係が長い、いわゆる熟年離婚の場合、夫婦共同生活の中で形成された財産は大きなものとなるケースが多いといえます。そしてこの夫婦共同生活の中で形成された財産には専業主婦における家事労働も含まれます。
すなわち、家事労働は具体的な財産として評価することは難しいですが、妻が専業主婦として家事労働をすることで夫は外で働き給与などを得ることができたということで、専業主婦でも財産形成に貢献していると考えられるのです。そのため、ずっと専業主婦であって外で働いたことがなくても、夫婦共同生活の中で形成された財産の半分を財産分与として請求できるのです。
本件でも、夫が長く外で働くことで多額の預貯金や不動産、さらには退職金(まだ退職はしていませんが、今退職したらならば受け取れる退職金相当額)があり、ご依頼者はその半分を全て取得することができました。
これによりご依頼者の老後の経済的心配はなくなりました。なお、ご依頼者のために年金分割も主張していたため、将来的な年金の増額も認められました。