ギャンブルが理由の借金でも自己破産できるのか?

弁護士 加藤 亨 (かとう とおる)

ギャンブル目的の借金は、原則として自己破産は認められません。しかし個々の事情の裁判所に汲んでもらうことができれば、免責(返済義務の免除)は十分望めます。
絶対にやってはならないのは、ギャンブルしていたことを隠して自己破産することです。

パチンコ・競馬等に消費してしまった借金について、自己破産を認めてもらう方法・借金の経緯を隠し通せない理由について解説します。

ギャンブルの借金=「免責不許可事由」に該当


借りたお金の利用目的=ギャンブルだった場合、これは法律で定められた「免責不許可事由」にあたります(破産法252条)。自己破産による返済義務の免除は、本来認めてもらえません。

免責不許可事由にあてはまるもの

  • 度を過ぎたムダ遣い
  • ギャンブル利用目的の借金
  • クレジットカードの現金化
  • 返済できない状況なのに、一部の債権者のみ支払いを続けること
  • 裁判所に嘘の説明をすること
  • 裁判所の財産調査に非協力的な態度をとること

ギャンブルの借金でも「裁量免責」となるケースもある


たとえ免責不許可事由があっても、個別のケースごとに「免責が妥当」と裁判官が判断を下す場合があります。このように自己破産に成功することは「裁量免責」と呼ばれ、ギャンブルで作った果たせない債務を解決するための唯一の方法です。
裁量免責の判断材料となるのは、破産する人の生活再建に向けた真摯な態度です。たんに面談できちんとした対応をすることではなく、書類上で「今後は収支を管理して計画的に生活できる」ということを証明する必要があります。

裁量免責を得るためのポイント


①申立書類で、これまでの経緯・現在の家計の状況をきちんと説明すること
②破産管財人による調査に誠実に対応すること
③反省文を提出すること
④免責審尋で生活再建への意欲をアピールすること

申立書類・反省文は、司法が注目するポイントを意識して作成しなければなりません。一般企業や個人間で取り交わされる「反省文」や「契約書」といった書面とは、まったく異なります。
加えて、裁判官との面談(審尋)にあたっては、厳しい質問が投げかけられることになります。こうした対応をひとりで背負いこむのは無理があると言わざるを得ません。精神的に追い詰められた末に、免責が認められない結果になりかねないでしょう。

弁護士は訴訟代理権をもっており、書類作成と裁判所とのやりとりをすべて任せることが可能です。債務整理を得意とする弁護士の場合は、免責不許可事由のある難しいケースで裁量免責を得るための方法について、現場ごとに時代の流れに即したノウハウを持っています。
そうした専門家のサポートを得ることが、ギャンブルで出来てしまった多額の借金から解放されるための近道です。

自己破産を認めてもらうための条件


自己破産の手続きを始めると、かならず「どんな目的で借金したのか」という点について裁判所に報告しなければなりません。借金の理由に悪質性がなく、きちんと生活再建できそうな人のみ免責(返済義務の免除)が認められます。

免責を認めてもらうための条件

  • 破産申立をした時点で返済不能であること
  • 借金の経緯に悪質性がないこと
  • (裁判所が必要と判断した場合)財産調査・債権者への資産分配が完了すること

特に重視されるのは項目2・3です。
調査と分配は裁判所に選ばれた「破産管財人」によって行われますが、彼らは破産申立人の生活態度を観察する役目も負っています。返すあてのない無計画なローン利用は「悪質性がある」と判断され、ほとんど財産がないことが明らかな状態でも、管財人の選任と調査が実施されます。
管財人には誠実に対応し、求められた説明は裁判所の運用ルールを意識して対応することが、自己破産を認めてもらうための最も大切な条件と言えます。

借りた理由を隠して自己破産を進めた場合のリスク


ギャンブルの事実を隠して自己破産を進めると、それ自体が「免責不許可事由」に当てはまってしまいます。借金理由そのものとあいまって、裁判官の心証がさらに悪くなることはさられません。結果的に、裁量免責はますます遠のきます。
重要なのは、依頼人の味方になってくれる専門家に全てを打ち明けることです。どの破産ケースにも、そこに至るまで自己責任では済まない事情が必ずあります。こうした事情を司法のルール通りの説明に変換し、裁判所に伝えてもらわなければなりません。

1~2度程度のギャンブルなら「免責不許可事由」にならない場合もある


「ギャンブル経験は1~2度程度」「債務全体のうちギャンブルに利用したのはごく一部」というケースでは、そもそも免責不許可事由に問われない可能性があります。
裁判所が注目するのは、返済できない状態に至った直接的な理由です。上記のケースだと、破産の直接的原因=免責不許可事由とは考えられません。この状況を訴えて通常の免責決定へと進むには「他のどんな事情が破産申立の直接的理由になったのか」という点を説明する必要があります。
いずれにしても、申立前の状況整理・綿密なプランニングは欠かせません。

自己破産には弁護士によるサポートが必要不可欠


ギャンブル目的の借金は、破産法で定められた「免責不許可事由」にあたります。自己破産による返済義務の免除は原則認められないため、書類作成・財産調査への対応を通じて裁量免責を目指す必要があります。
ギャンブル利用が借金全体のごく一部に過ぎない場合でも、破産申立の直接的理由になった事情を、より実務的に説明しなければなりません。

債務整理を得意分野とする当法律事務所では、ひとりひとりの事情にしっかり耳を傾け、困難を伴う様々な破産例をサポートしています。
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