裁判で離婚が認められる法定離婚事由とは

弁護士 加藤 亨 (かとう とおる)

日本で離婚する夫婦のほとんどが、夫婦間での話し合いで合意に至る協議離婚の形を採っていますが、話し合いではどうしても解決しない場合、裁判所を介して離婚を決定することになります。

ここでは、裁判で離婚が認められるための法定離婚事由の種類について解説します。

配偶者の意思に関わらず離婚が認められる「法定離婚事由」

裁判で離婚について争う場合、離婚を認めてもらうための確固たる理由が求められ、これを法定離婚事由と呼びます。
法定離婚事由は大きく5種類に分けられ、それぞれ以下のような定義を持ちます。

不貞行為

相手配偶者が、夫または妻以外の異性と性的関係を持つことを不貞行為と呼びます。

貞操義務がある夫婦のいずれかが不貞行為に至ることは明確な違反となりますし、夫婦間の信頼関係は大きく崩れることが想定されます。

従って、不貞行為をきっかけに夫婦関係が壊れたと見なされる場合、離婚が認められます。

悪意の遺棄

夫婦は相互扶助の義務を持ちますが、意図的に協力を拒み家庭生活に深刻な影響をもたらしている場合、悪意の遺棄と見なされることがあります。

生活費を渡さない、特別な理由なく同居を拒む、配偶者を家に入れない・家から出さない、といった例が悪意の遺棄に該当します。

夫婦の協力体制がどの程度崩れているか、夫婦の一方だけが不当に不利な扱いを受けていないか等、いくつかのポイントが判断基準となっています。

3年以上に渡り配偶者が生死不明

原因を問わず配偶者が3年以上に渡り生死不明の状態であり、もはや夫婦が形骸化していると見なされる場合、離婚が認められることがあります。

ただし、第三者による目撃がある場合や自分以外には連絡を取っている様子が見られる場合、生死不明とは見なされません。

配偶者が強度の精神病にかかって回復の見込みがない

配偶者が強度の精神病にかかり、今後の回復が見込めない場合、離婚が認められることがあります。

本来であれば、病気の配偶者を親身に世話することも夫婦としての義務だと言えますが、問題は精神病の状態が夫婦関係にどのような影響を及ぼしているかという点にあります。

精神病があまりに強度な場合、夫婦間の愛情関係や信頼関係が形ばかりのものになるケースもあり、配偶者の世話や看病のために本人が疲弊してしまうことがあります。従って、夫婦関係の根幹が失われた状態であると見なされた場合、患者の今後の生活にある程度の見通しを立てることにより、離婚が可能になることがあります。

婚姻を継続しがたい重大な事由

上記のいずれにも当てはまらないが、夫婦関係はすでに壊れており、以下のようなケースで今後の信頼関係や協力関係を維持できないと認められた場合、離婚できることがあります。

別居が長く続いている

これまでの婚姻期間と比べて別居期間が長い場合、すでに婚姻関係が壊れていると見なされ離婚が認められる場合があります。
離婚を希望する者が有責配偶者かどうかも判断基準の1つとなります。

ドメスティックバイオレンス(DV)やモラルハラスメントがある

DV・モラハラは明確な不法行為であるため、離婚事由として成立します。
この場合、できる限り証拠を集め、相手配偶者に対する慰謝料や損害賠償請求を行うことが重要です。

セックスレス等の性の不一致

夫婦の間に性交渉があることは、安定した夫婦関係維持に大切なことと考えられています。
従って、夫婦のいずれか一方が性交渉を強引に求めたり拒否したりする場合、離婚が認められることがあります。

異常性癖等も対象となります。

宗教活動に対し過度に傾倒している場合

特定の宗教に傾倒し、家庭生活に深刻な影響を与えていると見なされた場合、離婚が認められることがあります。

配偶者が犯罪を実行し服役した場合

配偶者が罪を犯して服役することになり、これが理由で夫婦関係が壊れた場合、離婚が認められることがあります。

過度の浪費

ギャンブルや買い物依存等、配偶者の浪費が過度なケースも該当することがあります。常に金銭を必要とし、そのために借金が膨らみ家庭生活に深刻な影響を与えている場合、夫婦間の信頼関係だけでなく安定した日常生活を維持することが困難になることから、離婚が認められることがあります。

法定離婚事由に該当するか迷ったらまずは弁護士にご相談を

明らかに法定離婚事由に該当する場合は、裁判により慰謝料や損害賠償金を獲得することも視野に入れた対策を講じることになります。

一方、自分のケースが法定離婚事由に該当するかどうか、判断がつきにくい場合でも、まずは当事務所までご相談ください。

仮に、現時点で明確な法定事由がなかったとして、それが原因となって将来的に法定離婚事由に発展する可能性があるためです。特に「婚姻関係の破綻」とは、様々な理由から起こるものであり、1つ1つの理由が法定離婚事由に該当しなかったとしても、不仲や別居が続くことによって結果的に「破綻した」と見なされることも多々あるのです。

本人からしたら離婚できるのか不安なケースも、弁護士が見れば離婚し得ると判断することもあります。ですから、迷ったとしても弁護士に相談する価値は十分にあるのです。

法定離婚事由は裁判で離婚を成立させるためのものなので、そもそも離婚協議で合意できれば離婚事由は必要ないことになります。

協議の方向で持っていけそうか、別の方法で離婚を探れないか、それでもダメなら離婚事由をより明確化するために少し時間をかけるとか、そういったアドバイスもできます。このような見通しの立て方は、経験がないと難しいところでもあるため、一人で抱えることなく、ぜひ積極的に当事務所までご相談頂くことを強くお勧め致します。