隠された生前贈与を明らかにし，遺産分割ができた事例

ご依頼の背景

ご依頼者は３人兄弟の次男であり，年の離れた兄（長男）と姉（長女）がいました。長男と長女は父親の近くに住んでおり，ご依頼者は仕事の関係で他県に住んでいました。

ご依頼者は他県で生活していたため，実家の父親（母親は既に他界）には年に１回程度しか会えない状態が続いていました。

しばらくすると，父親が入院し，やがて亡くなってしまいました。

その後，兄弟間で遺産分割協議をすることになりました。ご依頼者は兄と姉が父親から生前多額の金銭を受け取っていたこと（生前贈与）を知っており，その生前贈与を踏まえた遺産分割にすべきことを主張しました。

しかし，兄と姉は生前贈与など受けていないと言い，あくまで父親の死亡時の財産を均等に分割するべきと主張しました。話し合いは平行線となり，ご依頼者はどうにかしたいと当事務所にいらっしゃいました。

依頼人の主張

ご依頼者としては，兄と姉が父親から多額の生前贈与受けていたことを知っており，その生前贈与を踏まえ，相続時にはご依頼者の取り分が多くなるような遺産分割をすべきことが本当の意味での公平な遺産分割であるという主張でした。

サポートの流れ

被相続人からの生前贈与は遺産の一部前渡しといえるものであり，これを相続人の誰かが受け取り，他の相続人が受け取っていない場合，これを考慮しないまま遺産分割を行ってしまっては相続人間に不公平が生じます。

そこで，相続人間の実質的公平を図るために，民法では「特別受益」という制度があり，生前に受け取った財産などを「特別受益」とし，遺産分割において考慮して計算することとされています。（具体的には「持ち戻し」という計算を行い，特別受益を受けたものはその分，相続財産が減らされることになるのです。）

ただ，問題は生前贈与が特別受益に当たりうるとして，生前贈与を受けた相続人自身がその生前贈与の事実そのものを否定しているため，生前贈与があったかどうかを明らかにしなければならない点でした。

これについては，父親が昔から詳細に書き残していた日記や家計簿を見つけることができ，その記載を一つずつ確認し，お金の流れについて銀行などで裏を取っていくことで，長男や長女に父親の口座などから多額の金銭が動いていることを明らかにすることができました。

これにより，父親の生前，長男や長女が多額のお金を受け取っていた（生前贈与）の事実が明らかとなりました。

結果

長男と長女はもはや言い逃れはできないと観念したのか，その後は生前贈与の事実を完全に認めました。

これにより，この生前贈与（特別受益）を踏まえた遺産分割が行われ，ご依頼者は多くの遺産を受け取ることができました。ご依頼者は自身の主張が完全に認められ，とても喜んでいました。