個人再生の手続きを弁護士に依頼した時の流れ

弁護士 加藤 亨 (かとう とおる)

個人再生は裁判所を介した手続きになるため、たくさんの書類を用意して提出する必要があります。申立人の負う労力はかなり大きく、個人再生が認められるまではいくつもの過程を経る必要があることから、弁護士に依頼して完了を目指すことがほとんどです。

ここでは、個人再生手続きを弁護士に依頼した場合、どのような流れで進行するのかについて解説します。

弁護士を入れた個人再生手続きの一般的な流れ

個人再生手続きは、裁判所を介して金融機関とのやり取りを行うものであるため、流れに沿っていくつもの過程を経る必要があります。

かなり煩雑な手続きになるため、一般的には弁護士に依頼して手続きを任せることが多いと言えます。

裁判所への申し立て

個人再生手続きの申し立てを裁判所に対して行います。裁判所によっては、別途個人再生委員を選任して手続きを管理する場合があります。

個人再生手続きの決定

裁判所が個人再生の開始決定を出します。

申し立て時点か開始決定時点から、申立人の返済能力を確認するために「履行テスト」が行われ、毎月返済額相当を積み立てられるか、数ヶ月に渡りトレーニングが行われます。

債権届け出

債権者が、申立人の借金額について裁判所に報告を行います。

再生計画の提出

弁護士の方で再生計画案を作成して裁判所に提出し、申立人のトレーニング状況や財産内容についても報告します。

債権者による書面決議

提出された再生計画案に対して、債権者はこれを受諾するか否認するか回答します。

小規模個人再生の場合は書面決議により、給与所得者再生の場合は意見聴取により受け入れの可否が表明されます。

再生計画の認可または不認可

書面決議または意見聴取の内容や、提出された再生計画案が実行される可能性を考慮し、裁判所は再生計画の認可あるいは不認可の決定を下します。再生計画が認可されたら、翌月から再生計画案に基づく返済が始まります。

返済は申立人が各債権者に対して直接行うことになり、弁護士は関与しませんので、ここからはしっかりと遅れなく返済完了を目指さなければいけません。

 
以上の手続きが完了するまでに、およそ半年前後の期間を要します。

再生手続きに必要な書類

多種多様な書類が必要になり、一部は申立人が自ら収集し、一部は弁護士により代理作成されます。

申立人による用意

・申立書と陳述書:個人再生手続きに至った背景や借金の理由等について記載(弁護士が代理作成することもあり)
・債権者一覧:どの金融機関にどれだけの借金があるかをリスト化(弁護士が代理作成することもあり)
・財産目録:申立人が所有する財産の一覧を作成(弁護士が清書)
・家計収支表:数ヶ月に渡り家計収支を申立人自身が記録(弁護士が清書)
・住民票:本籍地の記載があるもの
・収入を証明する書類:直近3ヶ月分の給与明細書か過去2年分の確定申告書、年金や公的手当の受給を確認できる書類
・通帳:過去1年分の全ての通帳コピー
・生命保険:証書及び解約返戻金証明書
・不動産:登記事項証明書や住宅ローン契約書、償還表
・車:車検証や査定書

弁護士による用意

・債権調査票:債権調査のために債権者に送る書類
・再生計画案:減額と返済計画を提案するための書類
・弁済計画表:債権者ごとの返済計画詳細

再生の認可決定してからの返済実行が重要

一通りの手続きが済み再生計画が認可されると、以降は弁護士を介さず、申立人自身の管理によって、各債権者に対し毎月の返済を実行していかなければなりません。

再生計画は、決められた金額を決められた期間内で完済することを条件に認められるものですから、遅延等があった場合は再生計画自体が取り消しとなる可能性もあります。

ただし、事故や失業等、やむを得ないと考えられる理由により大幅な収入減があり、計画通りの返済が難しくなった場合は、再生計画の見直しが認められることがあります。これをハードシップ免責と言います。

ハードシップ免責とは

病気や事故等によって長期入院が必要になったり、失業や解雇後の再就職がどうしてもうまくいかなかったりする場合、当初に取り決めた再生計画通りの実行が困難になることが考えられます。

この時点ですでに残債の4分の3以上を返済した実績があれば、ハードシップ免責が適用され、残りの債務が免除されることがあります。

ただし、ハードシップ免責はやむを得ない理由により認められるものであるため、浪費や家計管理の甘さから返済が滞ったようなケースでは、免責は認められません。

個人再生手続きの不安や不明点は当事務所までご相談ください

個人再生について考え始める時点で、本人はすでに多額の借金を抱え、自転車操業のような状態になっていることが考えられます。

毎月の返済に苦慮する中、自分で何とか乗り越えようとする人も多く、他から新たに借り入れて返済に回す等の策を取ることも多々あります。

しかし、このような対策は結果として借金をさらに増やし、返済は場当たり的なものになるため、根本的な解決には繋がりません。

借金問題は人に相談しにくいものではありますが、収支のバランスが明らかに崩れ、先行きが不安な状況だと気づいた時点で、ぜひ当事務所までご相談頂きたいと考えています。

特に、住宅ローンを利用して購入した家を手放したくない場合や、借金の原因が浪費やギャンブルにある場合、過去7年以内に自己破産している場合等は、個人再生が有効です。

個人再生は圧縮された借金をしっかりと返済しきることが前提になってきますが、今後の生活を健全なものにするためには、積極的に検討すべき策だと言えるのです。

借金問題は、自力で乗り越えようとするほどますます状況が悪化することも多く、精神的な負担も大きくなり、本人にとってマイナスの影響を大きく与えることが多々あります。

そのような状況をできるだけ回避し、すぐにでも解決の糸口を探すことが重要ですから、ためらわずに当事務所弁護士までご相談ください。