寄与分を認められやすくするポイントと弁護士を介入させる強み
生前の故人に対し、献身的な協力や世話を行った場合、「寄与分」として多めに財産を相続することができます。ただし、寄与分を認めてもらうためにはいくつかのポイントを抑える必要があり、他の相続人を納得させなければいけません。
ここでは、寄与分を認められやすくするポイントと、弁護士の力を借りる強みについて解説します。
故人に対する特別な献身的行為を寄与分と呼ぶ
法定相続人のなかには、故人に対する強い関係性を持つ人物がいることがあります。
遠方に住みほとんど帰省できない子もいれば、献身的に故人の介護に尽くす子もいる等、その家族関係は実に様々です。
いざ相続の開始となった時、基本的には法定相続割合に従って財産を分けますが、生前の故人との関係性を考慮した場合、よく尽くした相続人に対する相続分を増やすことで公平性を図ることもあります。
これを寄与分と言い、自ら主張し認められれば、財産を多く受け取ることができるのです。
寄与したかどうかは、故人に絶大な協力を行ったことで、故人の財産が減ることを防ぎ、あるいは増加させることに貢献したかどうかが基準となっています。
また、報酬を受け取って協力したものは寄与とは呼ばず、あくまでも無償で継続的に尽くしてきたこと、故人のために専従してきたことが非常に重要なポイントとなります。
例えば、故人の看病や介護に尽くしたり、故人の事業の手伝いを十分に行ったり、故人が抱えていた債務を代わりに払ったりする等の行為が挙げられます。
寄与分を認めてもらうためには証拠が必要
どれだけ故人に尽くしてきたとしても、それを客観的に証明する材料がなければ、周囲を納得させることは簡単ではありません。
また、自分の寄与分を主張し認めてもらうということは、他の相続人の取り分を減らし自分のものとすることに繋がります。
従って、十分な寄与行為とそれを裏付ける証拠、周囲の理解がなければ、寄与分の主張をきっかけに揉め事に発展することもあるので、慎重に準備を進める必要があります。
寄与があったことを示す証拠記録の例
故人の事業を手伝ってきた記録
タイムカードの記録や仕事内容について交わしたメール文、取引先と交わした電話のメモやメール文等が役に立ちます。
通帳の取引履歴
故人の債務を代わって返済したり、故人に対して金銭的援助を行ったりした場合、通帳の取引履歴から寄与行為を証明すると良いでしょう。
故人の介護状況を把握できる記録
要介護認定がわかるものや医師による診断書があれば、故人の状態を把握することができます。
また、ヘルパーとのやり取りを記録したものがあれば、自分が故人の介護に専念していたことの証拠となり得ます。
具体的な介護内容・看病内容の記録
日記や介護記録等を自分でつけていた場合、介護に関わった期間や毎日の介護従事時間、行った作業内容等がわかることが重要です。
これらの記録は、遺産分割協議の際はもちろんのこと、調停や裁判に至った時はさらに重要な証明材料として役立つことになります。
寄与分が認められた場合の相続分計算
寄与分が認められた場合、当該相続人の相続分は以下の計算式に基づいて算出することになります。
(遺産総額-寄与分)×法定相続割合+寄与分
従って、1,000万円の財産を残して亡くなった故人の相続人が配偶者と子1人で、うち配偶者に500万円分の寄与があった場合、配偶者と子の相続分は以下の通りとなります。
配偶者の相続分
1,000万円-500万円=みなし相続財産500万円
500万円×2分の1=法定相続分は250万円
250万円+寄与分500万円=実際の相続分は750万円
子の相続分
1,000万円-500万円=みなし相続財産500万円
500万円×2分の1=法定相続分及び実際の相続分は250万円
寄与分の主張は遺産分割協議から
特に遺言書に寄与分について記載がない限り、当該相続人は自ら寄与分の主張を行う必要があります。
相続開始後は遺産分割協議を行いますので、他の相続人も集まった場で、裏付け材料を提示する等して理解を求めていかなければなりません。
ただし、寄与行為について全ての相続人が理解・納得するとは限らず、実情を知らない人も存在します。彼らにとっては、寄与分を認めることは自分の相続財産の減少に合意するということでもあり、ここに感情的な問題が生じる可能性があります。
従って、遺産分割協議で話がまとまらない場合は、場所を裁判所に移し、調停あるいは審判による解決を目指すことになります。
調停で寄与分を主張する
調停では、調停委員が相続人同士の話し合いを仲介してくれますので、当事者間での話し合いに比べるとはるかに冷静な進行が期待されます。
その場合でも、自分の主張が正論であると調停委員に印象づけることは重要で、主張を裏付ける材料を揃えて提示しながら、論理的に正当性を訴える必要があります。
審判で寄与分を認めてもらう
調停が不調に終わった場合、家庭裁判所裁判官が判断を下す審判に移行します。
この時、提出された各種の証拠書類と本人の主張の正当性を判断し、裁判官が寄与分を認めるかどうかの結論を下します。
相続の調停や審判を有利に進めるには弁護士の力を借りることが大事
遺言書がない相続においては、本来であれば法定相続割合に従って財産が分配されます。
しかし、寄与分が主張され認められることにより、本来の相続割合は変化し、他の相続人には金銭的に大きな影響を与えることになるのです。
従って、裁判所としても寄与分を認めることが公平なのか不公平なのか、慎重に判断しますので、主張と立証は慎重かつ丁寧に行わなければなりません。
しっかりと事実を理解してもらわなければ、相続人の間にも不満や疑念が生じる可能性がありますから、寄与分の主張は非常に繊細な問題だと言えるのです。
弁護士が介入すれば、寄与分を認めてもらうための周到な準備はもちろんのこと、代理人として他の相続人を納得させるために尽力することもできます。
弁護士は法律と証拠に基づいた適正な権利を主張していきますので、当事者同士が話すよりも揉め事に発展することが少なく、比較的スムーズに解決できる傾向があるのです。
ぜひ、問題が複雑化する前に、当事務所弁護士までご相談頂くことをお待ちしております。