遺産分割協議に向けて弁護士に依頼すべき4つのメリット

弁護士 加藤 亨 (かとう とおる)

遺産相続は、限られた時間の中で複雑な法的手続きを完了させなければならないため、大きな困難を伴いやすいと言えます。相続人の間で感情的あるいは財産面でのトラブルが起こることも多々あります。

ここでは、円満な解決を目指すために、法のプロである弁護士に依頼する4つのメリットについて解説します。

弁護士の存在自体が早期解決を促すことがある

弁護士は、依頼者の意思を代弁し、その利益を守ります。

一方で、あらゆる事柄が法に基づき正しく遂行されることを助ける役割も負っています。

多くの人はこのことをよく理解していますから、遺産分割協議に弁護士が現れるだけでも、参加者の背筋は正され、その場の空気感が変わり、相続人同士のこじれた関係性がほどけるきっかけにもなるのです。

当事者だけで話し合いをしている場合、各人の発言の背景に自分の経験や感情、利益を得たい気持ち等がいくつも存在するため、全員にとって100%問題なく合意できることは稀だと言えます。

ちょっとしたことがきっかけですれ違いが起こったり、疑心暗鬼になったりすることもありますが、弁護士という第三者が介入することにより、「物事が常に正しい方向で進んでいる」という認識が生まれます。

弁護士は信頼できる第三者であり、法律のプロであるという認識が、弁護士の存在そのものに安心感を与え、関係者間の無用なトラブルを避ける効果が期待できるのです。

他相続人とのこじれた関係性から解放される

誰がどういう理由によってどの財産を相続することになるのか、その流れは全ての相続人の大きな関心を集めると言えます。

特に、財産の中に不動産が含まれていた場合、その全てを相続したいという人が出てきていざこざになったり、分け合うにしても複雑な手続きが必要だったりして、なかなか相続自体の着地点が見えてこなくなります。

思い通りに事が運ばない時、人間の中にある欲や妬み等の感情が露わになりやすく、互いに欲をぶつけ合って問題が深刻化しやすくなります。

このような状態で遺産分割協議を行うことはかなり難しく、毎回大きなストレスを抱えながら大きな進展は得られない、という不毛なものなってしまいがちです。

弁護士に依頼しておけば、基本的には依頼人の代弁者となるものの、法的に無理な主張は行いませんし、分配のあり方についても、揉め事が最小限に抑えられるよう交渉を進めていくことが可能です。

親族が集まる場に顔を出すことが精神的に辛い場合、代理人として出席してもらうことで、ストレスを大きく軽減することもできます。

親族としても、弁護士がいれば、わかりにくい相続手続きについて説明を受けながら理解していけるので、比較的落ち着いた状態で協議を進めていける可能性が高くなります。

遺産分割協議は必ずしもすぐに合意に至るわけではなく、非常に時間がかかることも珍しくありません。

長期に渡り親族の関係性が悪化し、かつ問題解決も長引くという状況を避けることを考えれば、弁護士に依頼することは関係者全員にとってのメリットになるとも言えるのです。

弁護士は法に基づく適正な主張を行うことができる

相続について知識や経験がない状態では、財産をどのように扱えば良く、どのように分配すれば良いのか、かなり難しさを感じるものです。

親族関係に問題がないことから、口約束だけで財産を分割し、後になってから非常に不利な分け方であったことに気付いて問題になるケースもあります。

預貯金や不動産、負債に至るまで、相続に明るい人がいなければ自分の利益を主張することもできませんし、どのような根拠に基づいて分配するのか理解するのも難しいのです。

ですから、専門家を介入させて手続き自体を滞りなく進めることはもちろん、各相続人にとって不公平とならない一線を守りながら、依頼者の利益を十分に確保することは非常に大切だと言えます。

当事務所では、依頼者の気持ちは最大限お聞きするようにしており、その希望が正当な権利である場合はしっかりと代弁し、利益確保に尽力します。

ただし、他の相続人もいてのことになるので、依頼者だけに利益が集まる形は決して良くなく、いつまでも話がまとまらない原因になってしまう、ということも事前にしっかりとお話しております。

この点は重要ですから、依頼者にはよく理解して頂いた上で、できるだけ早期に相続手続きが完了するよう、当事務所弁護士は最も良い形での決着を模索し、解決へと導きます。

弁護士がいると調停が有利になる

協議で話がまとまらない場合、調停を利用して合意を目指していくことになります。

話がまとまらない原因の一つとして、感情的に要求だけを主張する場合がありますが、その他にも、財産隠しの疑いがあるケースや評価額をきちんと計算しておらず曖昧になっているケース等が考えられます。

隠し財産については、その調査経験を持つ弁護士がいるかどうかでスムーズさがかなり変化します。

素人では財産調査自体が全く初めての経験になりますが、弁護士であれば「どこに調査依頼をすれば何がわかる」という流れを把握しているため、漏れなく迅速に全ての財産を目録化できます。

財産評価額や相続額、税額についても、不動産や相続等の関連法を駆使しながら難しい計算を行っていく必要があるため、弁護士がいなければ正しい数値を明確にすることは非常に困難です。

調停で話し合いを行う時点で、相続人間では何らかのトラブルが起こっているわけですから、できるだけ有利に話をまとめるためには、自分の主張をしっかりと裏付ける材料を提示することがとても大切なのです。

調停委員としても、感情的な主張より、根拠に基づく主張に信憑性と正確性を感じるものですから、味方につけやすく有利になりやすいと言えます。

相続問題では早めに弁護士に相談するのがカギ

財産を分けるという目的において、関係者の思惑がぶつかり合うのが遺産問題ですから、分配のルール・財産一覧・確かな評価額の3点が明確になるだけでも、感情的なこじれの多くは解消できる可能性が出てきます。

問題が深刻化してしまい、かなり複雑な状態になってからだと、まずは全体像を理解して感情のもつれを解くところから始めなければいけず、結果として大変な時間を要することもあります。

ですから、スムーズに遺産分割協議を開始し、問題を回避してスムーズに手続きを終えることを目指すのであれば、ぜひ当事務所まで早めにご相談頂くことをお勧めします。